2023年7月4日・11日に、日本女子大学総合研究所公開研究会「持続可能なファッションと地域を創る出会い・交流・協働:3人の実践から自分の『一歩』を考える」が目白キャンパスで開催されました。家政経済学科と被服学科の学生たちに加え、本学他学科の学生や高校生、他大の大学生、社会人の方も共に集い、サスティナブルな未来のための実践に取り組む大田康博先生(駒沢大学、テキスタイル産地ネットワーク代表)・植月友美氏(社会企業家、Emter the E 株式会社代表)・内田友紀氏(都市デザイナー、Yet代表、Re:publicシニアディレクター)のご講演をお聞きしました。
2日間のグループワークは大量生産・大量消費社会が生み出してきた社会のひずみと分断の問題を私事としてとらえなおすよい機会となりました。
1日目の研究会で、華やかなファッションの世界の背後になる社会のひずみや分断の問題の深刻さは理解できたけれども、生産や流通などの企業側の責任にむしろ焦点があたったグループも多く、「生活者の視点」を学んできた家政学部の学生さんでもこれだけファッションの世界の社会的課題を自分事としてとらえるのは難しいのだという現実を目の当たりにしました。
そこで2日目の研究会に向けては、そうした社会問題に参加者一人一人がどう「当事者意識」を持ってもらえるのかを、登壇者の先生方とかなりオンライン上でディスカッションして考えて、準備しました。この研究プロジェクトは、家政学部学術交流費で初年度はご支援いただき、その後、総合研究所に引き継いでもう4年目になるのですが、このプロジェクト上で実施してきたいくつもの企画の中で、私としては一番悩み抜いた1週間になりました。2日目のグループワークシートやアンケートの結果を見ると、参加者それぞれがそうした企画側の準備をしっかり受け止めてくれて、大きなジャンプのある学びをしてくれたようです。
グループワークシートの意見を整理して、少しご紹介します。
〇前回の講演は大きすぎる話が多くピンとこなかったが、今日の内容はより当事者意識を持って聞くことができた。当事者意識が芽生えると、自分の好きなものから発展させていくという考えに共感でき、親近感を覚えたし、日常の生活にも発展させていきたいと感じた。
〇今の生活を失うことになるくらいならその現状のままでいてほしいという正直な気持ちと、自分が犠牲者側に回ってしまった場合を考えたときの心苦しい気持ちとの両方の間に葛藤が生まれた。…現在の日本の経済状況で、安い服を無くしたり、これ以上物価を上げたりすることは現実的ではないと考える。そのような制約の中で、私たちができそうなこととして3つを挙げる。第1に、安いものでも買ったものは長く大事に着ること、第2に、不要になった服をフリーマーケットに出品するということ、そして第3に、大学に不要になった服を持ちよって寄付できる場所を作るということだ。
〇抽象的で難しいことを解決していくために、固定概念にとらわれず分野を超えた繋がりを作り、みんなで考えていくことが大切である。そうすることで、漠然としている危機意識が小さなところから広がり、現実的になっていく。そのために、まず自分の無知に気づき、知っていくことが重要になる。ネットで調べるだけでなく、現地に行ったりして知る努力の水準を上げるべきである。
参加者みなさん一人ひとりのものを考える視野がぐっと広がった2日間になってくれていたらうれしいです。
当日の参加者の様子は、下記のインスタのリール動画でも紹介していますのでどうぞご覧ください。
↓
家政経済学科教員(額田春華)